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論の解説:仏教研究


仏教の教義は、仏の教えを記録したとされる経、修行の実践的な心得を説いた律、経及び律の具体的なことがらについて解説した論からなる。これを三蔵といったりする。あの三蔵法師の言葉の由来となるものである。この三つは、小乗・大乗を通じて共通のものだが、小乗のほうがその区分を厳密に守っている。小乗関係の仏典はこの区分にしたがって分類・整理されているのである。一方、大乗のほうは、小乗ほど厳密な区分にこだわらない。大乗関係の経典類を集めた一切経(大蔵経ともいう)には、経・律・論に相当するものが雑多なかたちでおさめられている。だが、内容的には、三蔵の区分にしたがって分類することができる。

論は、経や律の具体的なことがらを解説したものである。お経に対する注釈のようなものである。大乗についていえば、歴史的な流れとして、中観派とよばれるものと、唯識派とよばれるものが、有力である。中観派は、起原150ー250年ごろに活躍したナーガールジュナ(竜樹)が創設したもので、般若経の空の思想に立脚して、その空の思想から釈迦の教えを解釈したものである。ナーガールジュナの著作はいずれも、小乗に対する強い対抗意識に貫かれており、その論調は、小乗の説への反駁・批判というかたちをとっている。大乗の勃興期の雰囲気を反映していると考えられる。

唯識派は瑜伽行派とも呼ばれ、5世紀に活躍したアサンガ(無著)、ヴァスパンドゥ(世親)の兄弟によって創設された。この兄弟の像(運慶作)が興福寺にあるので、見たことのある人も多いだろう。唯識派の説は、華厳経の三界唯心の思想に立脚し、心の実在性をとく点で空の思想を説く中観派とはことなる。唯識派最大の論客ヴァスパンドゥは、小乗の説一切有部の出身であり、実在説にはもともとなじんでいたのである。

このほか、大乗起信論が、ながらく大乗仏教の入門書として重宝されてきた。これは近年、南北朝時代の末期に中国人が偽書としてあらわしたものとみなされるようになったが、それはともかく、唯識派に親縁な立場から大乗仏教の基本的な内容を丁寧に説明している。鈴木大拙が欧米人向けに書いた仏教の入門書「大乗仏教概論」は、大乗起信論に大部分依拠している。

ここでは、大乗関係の論の主要な著作について、その内容を解説したいと思う。


中論を読む

中論を読むその二:原因(縁)の考察

中論を読むその三:運動(去ることと来ること)の考察

中論を読むその四:六根、五蘊、界の考察

中論を読むその五:貪りに汚れること貪りに汚れた人との考察

中論を読むその六:つくられたもの(有為)の考察

中論を読むその七:行為と行為主体との考察

中論を読むその八:火と薪との考察

中論を読むその九:自性と無自性の考察

中論を読むその十:業と果報との考察

中論を読むその十一:アートマンの考察

中論を読むその十二:原因と結果との考察

中論を読むその十三:転倒した見解の考察

中論を読むその十四:四つのすぐれた真理の考察

中論を読むその十五:ニルヴァーナの考察


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