菅内閣不信任案否決をどう考える
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自民党などの野党が共同提案した菅内閣不信任決議案は否決された。一時は場合によっては可決もあるかと思われた決議案が否決されたことには、菅総理大臣が自分の退陣に一定の道筋をつけたことが背景にある。これによって、菅総理大臣に厳しい対決姿勢を見せていた小沢前民主党代表や、鳩山前総理大臣が対決姿勢を和らげた。
とりあえず不信任決議は退けられた形だが、そうかといって与野党の対立が弱まるわけではない。また民主党の内紛も収まるわけではない。事情によっては、規模を拡大した形で再燃する可能性がある。
しかし今回のこの政治劇を、国民の多くはうんざりした気持ちで見ていたに違いない。筆者の職場でも、国会中継に釘付けになっているものが多数いた。彼らの大多数はこの政治的茶番劇に厳しい評価を下していた。
たしかに菅内閣の支持率は史上最低といっていいほど低い。それは菅さん自身の人間性に起因するところもある。だからといって国民の大多数は、今は権力争いなどしている場合ではないだろうと思っているのではないか。かりに不信任決議が可決され、総選挙にでもなったとして、この国難に瀕している今の日本に、果たして政治空白が許されるのか、と誰もが思っている。まして東北の被災地では、地方選も実施できる状態ではない中で、選挙などやっていられないといった声が強く出ていた。
日本の政治家の小児的な矮小さには目を覆いたくなるほどだ。権力闘争は政治家の業のようなものだとして、震災復興に向けて国をあげて取り組まねばならないときに、足の引っ張り合いばかりやっている。小学生でさえ、もう少し聞き分けがあるものだ。
自民党の谷垣さんなどは、大政党の党首なのだから、もう少し風格を感じさせても良いところ、口から泡をとばして政敵を罵っている。これではチキンレースどころか、トカゲの泥仕合といったところだ。
菅さんは自分の退陣については言及したが、それがいつになるかについては明示しなかった。震災復興に一定の見通しがついた時点というが、それがいつになるかは、人の頭の数ほど解釈の違いがある。それを分かった上で、退陣を引き伸ばしにするなら、早々と対立が激化するだろう。
とにかく、不信任の後に何がくるか、そのヴィジョンを明らかにしないままで、退陣を迫るのは理解できることではない、というのが多くの国民の率直な気持ちだろう。
様々な点で、攻める側にスキが大きく、守りにまわった菅さんの老獪さが目立った一幕だった。
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