日本語と日本文化


フィリピンでの遺骨収集に見る厚生省のお役所体質


先日厚生省がフィリピンで収集した旧日本軍兵士の遺骨の中に現地の人たちの遺骨が大量に含まれていたというニュースが流れて、遺族たち直接の関係者はもとより、心ある日本人すべての怒りを買った。厚生省のあまりにもお役所的で無責任なやり方が、国民の尊厳を踏みにじるばかりか、旧日本軍が侵略した国の人々の尊厳をも踏みにじったと。

太平洋戦争中に国外で戦死した旧日本軍の兵士たちの多くは、遺骨さえ納めてもらえない情況が続いている。この仕事を担当している厚生省が、まじめに取り組んでこなかったことの結果だ。フィリピンに関して言えば、レイテ島やミンダナオ島などの戦場で死んだ日本兵は52万人、うち15万人は遺骨収集が済んでいるが、まだ37万人は収集されていないと、厚生省は認めている。このままでは、歳月に風化され、いずれ土になってしまうかもしれない。

こんな批判を浴びて、厚生省は遺骨収集のペースを速める策を採用した。現地住民の宣誓書とフィリピン国立博物館の証明書があれば、日本兵と認定することとし、その事業を民間に委託したのである。受託したNPOは、骨を持ち込む住民らに「日当」を払い、骨の収集の効率化につとめた。

この結果、2007年度には161柱分だったものが、2009年度には7700柱、2010年度は上半期だけで6300柱と、遺骨の収集量は飛躍的に増えた。ところがである。日当を払うなどのやり方と、ずさんな確認体制の陰で、金目当ての遺骨収集が横行し、地元の人の墓が暴かれて遺骨が盗まれるというような事態が出現した。厚生省は、地元住民からのからの強い抗議を受けて初めて事態の深刻さに気づくといった、無責任ぶりだったのである。

フィリピン以外にも、放置されたまま異国の地にさまよっている日本兵の英霊は多数に上る。太平洋戦争中に海外で戦死した240万人のうち、半数近い115万人の遺骨がいまだに放置されたままである。半世紀以上もたっていまだに、こんな情況を放置している国が、一体まともな国といえるのか。

厚生省の無責任きわまるお役所仕事には、怒りを通り越して侮蔑さえ感じるというものだ。


    

  
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