日本語と日本文化


韓国併合100年:伊藤博文と安重根


今年(2010年)は日本による韓国併合100年にあたる年である。その節目にあたって、この歴史的出来事と、それが日韓両国にもたらしたインパクトについて検証する目的で、NHKが特集番組を組んだ。「韓国併合への道 伊藤博文とアンジュングン」と題するその番組をみて、いささか考えさせられることがあった。

日本による韓国併合の法的根拠となったものは、1910年8月22日に締結された「韓国併合に関する条約」であるが、その有効性については、今日も日韓両国で認識の差がある。日本側はこの条約を国際法上のルールに基づいたもので、合法かつ有効であったとしているが、韓国側(北朝鮮側も)は、これを違法かつ無効なものだったと主張している。

法的な問題のほかに、番組はこの併合を推し進めた伊藤博文に焦点をあて、その政治的なスタンスを振り返りつつ、併合の前年にハルビンで伊藤を暗殺した韓国人アンジュングン(安重根)にスポットライトをあてていた。

安重根の名を知っている日本人は、今日ほとんどいないに等しいだろう。伊藤博文を暗殺した人間といわれて、はじめてその歴史的な位置づけに思い当たる程度だろうと思う。一方伊藤博文のほうは、明治維新の立役者のひとりであり、議院内閣制の生みの親として、日本人にとっては格別の意味を持っている。紙幣の肖像にも取り上げられているほどだ。

ところが韓国人にとっては、伊藤博文は韓国統監として朝鮮半島の植民地化を推し進めた人間であり、韓国併合に道を開いた責任者だ。その伊藤を殺したアンジュングンはだから、民族の英雄として、今日でも深い尊敬を集めている。

これは日韓両国の間に、歴史認識をめぐって大きな溝が、いまだにあることを物語っている象徴的な事例だと、番組は語りかけていた。

異なった国の国民のあいだに、歴史認識をめぐって溝や対立が生じるのは、ある意味でいたし方のないことだ。だがいたし方がないといって、それを埋める努力を怠ると、再び不幸な関係に陥りかねない。対立は対立として厳然と存在することをわきまえた上で、それを埋める努力をしなければならない、これが番組のいいたかったことのようだ。


    

  
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