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三粋人経世問答:増税政局を語る


無覚先生:やあ、お久しぶり。ところで、ついに消費税の増税案が衆議院を通りましたね。通ったとはいえ、変な問題がいくつもくっついていて、どうもわかりにくいところが多かったね。まず、民主党内であれだけ議論があったものを、野田さんが、自民、公明を抱き込んで成立させた。おかげで民主党は分裂の可能性が一気に高まった、これはまあ、ジャーナリズム得意の政局がらみの話だよね。もう一つ、民主党には、マニフェスト違反への批判にどうこたえるのか、そこが良くわからない、野田さん自身は、自分は十分に応えたつもりのようだが、国民の殆どは、どうもそうは思っていない。更に、そもそも今現在、消費税を上げることにどれだけの正当性があるのか、そこのところがいま一つ不透明だ、そんな問題もある。ともあれ、今回の野田さんのやり方は、決められない政治からの脱却だと褒める意見がある一方、国民への公約よりも、自民・公明との野合を優先させたもので、民主主義への敵対行為だと、厳しい批判もある。相変わらず、日本の政治には分からないところが多い、あらためてそんなことを感じさせられたね。

静女史:わたしは、なんだか増税優先のように、それも消費税といったら大衆課税でしょ、それをやみくもに行おうという姿勢に、違和感を感じるわ。小澤さんがおっしゃてるとおり、いまは不況の真っ最中で、こんな時期に消費税をあげたら、ますます不景気になるのが目に見えていると思う。それに、最初は税と社会保障の一体化なんて言ってたのに、いつの間にか社会保障の方は置き去りにされて、増税ばかりが突っ走った、そんな気がするわ。なんだか、とても評価する気にはなれないわよね。

俄然坊居士:消費税自体は、いつかは上げなければならなかったのでしょう?それが今まで上げられなかったのは、政治家たちがだらしがなかったからだった。それがやっと実現できたのは、素直に評価すべきだと思いますよ。何といっても、日本にとって、財政の健全化と社会福祉財源の確保は避けて通れない問題なわけですからな。

静女史:何よ、財務省の役人みたいないい方じゃない? わたしは、今回、野田さんは財務省の役人に洗脳されて、猪突猛進した、そんな風に思ってるのよ。でも、増税だけでは反発が強い、それで社会保障との一体化なんて言い出したけれど、その社会保障もいつの間にか置き去りにされたじゃない。最初から、ただの言訳で、本命は消費税の増税にあったんだわ。

俄然坊居士:たしかに、野田さんには拙劣なところがあったようですね。何のために消費税を上げるのか、そこのところがきちんと国民に説明できていなかったきらいはある。その結果、無闇な批判を受けた、そういえなくもないところは、たしかにある。でもまあ、どっちへ転んでも、やらなければやらないことは、やらなければならない、そこのところをやったわけだから、少しは褒めてやってもいいでしょう。

静女史:わたしだって、増税ぜったい反対、というわけではないのよ。国のために本当に必要なら、上げることは仕方がないと思ってるの。問題なのはそこなのよ、本当に必要だという理由が、とことん説明されていない、そう思うのよ。だからすっきりしないの。民主党の中にだって、消費税を上げる前にやることがあるといってる人たちも大勢いるわけでしょう。それなのに、そうした意見はほったらかしにして、自民党と手を結んでまで増税することにこだわった、なんだかそんな風に思われちゃうのよ。

無覚先生:そこで、今回野田さんが自民・公明と手を組んだこと、それがきっかけで民主党が分裂含みになっていること、これについてどう考えるか、聞かせて下さいますか。

静女史:自民党は前々から消費税をあげたかったんでしょ? それなら初めから野田さんに協力すればよかったのよ。それなのに、なんだかんだと屁理屈をこねて、相手をいらいらさせ、最後の土壇場になってやっと手を結んだ。そのやり方に、ちょっといやらしさを感じるわね。

俄然坊居士:そこはそこ、政治の世界ですよ、政治には手練手管がつきものです。自民党にとっては無論、消費税を上げるのは積年の課題だった、それをライバルの民主党がやってくれるというから、こんなにうまい話はなかったのは事実だ。だが、そこが手練手管と言うもので、相手に手を差し伸べるからには、売る恩義に倍する見返りがなければならぬ、そう考えるのはごく自然なこと、今回その見返りとは、話し合い解散だったわけです。

静女史:その見返りも怪しいものだわ、野田さんはそう簡単に、自民党の言い分を飲むとは思えないもの。

俄然坊居士:しかし政局は、話し合いでなく、力づくで解散という可能性も含んでいます。つまり、小沢さんのグループが離党する可能性が出てきたため、場合によっては、その小沢さんのグループと自民・公明が手を握り合って、内閣不信任という筋書きも、ありということになってきましたからね。

静女史:ところで、小沢さんのいっていることだけど、どう思います? 

俄然坊居士:小澤さんのいってることには、わからないことが多いです。今回もそうだ。小澤さんは消費税なんかあげなくても、税源はいくらでもあるとか、当面消費税はあげないと国民に対して約束してきたわけだから、それを破るのは国民に対する背信だなどと、格好いいことを言ってるようですけど、どうも眉に唾して聞いた方がいいようです。増税が国民への約束違反だというのは、そのとおりだと思いますが、増税しなくても社会保障の財源は十分になるというのは、ペテンではないか。

静女史:わたしは、小沢さんの味方をするつもりじゃないけど、というより、私は小沢さんが嫌いなんですよ。でも小沢さんのおっしゃってることは正論だと思うのよ。前回の選挙で民主党が勝ったのは、民主党が掲げたマニフェストのためでしょ? それが全部じゃなかったかもしれないけど、少なくとも、それを信じて民主党に投票した人も沢山いたと思うのね。それを、一方的に破棄したわけでしょう。国民にすると約束した政策はすべて放り投げ、しないと約束した増税だけを遮二無二やろうとしている、いくらなんでも国民を馬鹿にしてる、そういえるんじゃない?

俄然坊居士:とにかく小沢さんのやり方は乱暴すぎますな。というより、自分と違うものは何もかも認めない、そんな傲慢さがあるように思える。だから、いま一つ国民の人気もないし、同じ政治家仲間からは、毛嫌いされる。

静女史:だからといって、政敵にはどんなことをやってもいいんだということにはならないわよね。週刊文春に出てたあの記事なんか、小沢さんを没落させるためには、スキャンダルでもなんでも、なりふり構わず利用してやろうという魂胆が透けて見えて、ほんとにいやらしいわ。

無覚先生:とにかく、政局が一気に流動化していくようだね。このままだと、小沢さんのグループが新党を旗揚げする可能性が強い、そうなると内閣不信任の可決と言う事態も考えられなくはないし、いずれにせよ、解散総選挙はそう遠くないのではないか。そうなれば、民主党の分裂が引き金になって、政党の再編成もあるだろう、ということで、折角できたかに思われた、民主・自民の二大政党システムが揺らいでいく可能性がある。

俄然坊居士:二大政党の定着を願っていた小生としては、残念な事態と言えますな。ですが、いまの政局を見ると、このままの体制で二大政党制が成熟していくとは思えない。というのも、自民党は別として、民主党はとても志を同じくする者の集団とはいえない面がある。つまり右から左までが一つの旗の下に共存していて、それぞれがてんでに違う方向を向いている。これではうまくいくわけがない。小澤さんが出て行ったところで、もう少しすっきりした政党イメージを確立したほうがいい。

静女史:わたしは別な考えなのよ。むしろ民主党には小澤さんのような考え方に純化してもらいたいの。それは、イギリスの労働党とかフランスの社会党とか、社会民主主義的な政党のあり方を、日本の民主党にも採用してもらいたいということなの。だから、小沢さんが出て行って、小沢さん抜きの民主党になったら、自民党と同じような政党がもう一つできるだけ、そんな風に思ってるのよ。わたしは、自民党には当分政権から遠ざかっていてほしいと思ってたので、民主党にはもっと頑張って欲しかった。だから野田さんが、マニフェストを棚上げしたとたんに、自民党の手玉に取られてるのを見ると、とてもイライラするわけ。とにかく自民党には、受けたお灸の効果をもっと味わっていてほしいわ。

無覚先生:原発再稼働問題とか、原子力規制委員会設置法に、原発の目的として安全保障条項を入れたりとか、たしかに野田さんは自民党の要求に応じて、譲歩しすぎているという印象は否めないね。

俄然坊居士:消費税増税にしろ、こういう問題にしろ、それを民主・自民の大連立構想の現れという見方もある。

無覚先生:たしかに民主党には、自民党との大連立を模索した時期もあったが、それが今回のように、なしくずしに、しかも国民の目の届かないところや、説明の十分でない状況で行われていくのは、問題があるね。いずれにしても、日本の政局の前途多難な状況は当分続きそうだ。ともあれ今日はご苦労様でした。


    

  
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