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三粋人経世問答:2012年総選挙を語る


無覚先生:今回の総選挙は民主党が大敗して自民党が躍進し、公明党と合わせれば三分の二以上の議席を獲得した。一方第三極と言われる勢力については、維新の会が一定の議席を獲得したのに対して、原発ゼロを訴えた未来の党は伸び悩んだ。それにしても、民主党の負けっぷりは見事だったね。2009年の総選挙では300議席以上を獲得し、改選前の時点でも230あったのが、たったの57議席に激減した。維新の会でも54議席をとったのだから、いかにとんでもない数字であるか、わかろうというものだ。まさに壊滅的な敗北と言ってよい。なぜこんなことになったのか。どう思いますか。

俄然坊居士:理由はふたつあると思いますよ。ひとつは政策をめぐる失敗、もうひとつは党内の権力闘争。政策については、よくいわれるように、民主党は前回の選挙で掲げたマニフェストでの約束をほとんど実現できず、そのかわりに、しないと約束していた消費税増税をやるなど、いわば国民を欺き、愚弄するような行動をとった。そのことで有権者の怒りを買ったというのがひとつ。また、民主党も自民党におとらず雑多な集団の集まりで、集団間の権力闘争にあけくれた。その挙句に、分裂を繰り返し、政党としての体裁をなしていないような状態を呈した。そのことが国民をあきれさせた。このふたつが重なって、今回の敗北に至ったのではないか、小生はそんな風に思いますな。

静女史:たしかに、マニフェスト違反はひどかったわね。うそつきだといわれても仕方がない側面はあるわね。とくに、消費税の増税は、しないといっていてしたわけだから、俄然坊さんのいうとおり、国民をだましたということになるわよね。でも、この増税は、自民党や公明党との協力があってできたわけでしょ。だから、民主党ばかり責められるのは、ちょっとすっきりしないところもあるけど、やはりだましたことには違いないわよね。国民の皆さんは、うそつきの政治家が一番嫌いだと思うから、民主党に鉄槌がくだされたのも、無理はないと思う。

無覚先生:おふたりから民主党敗北の原因についてお話を戴いたが、わたしも同じような考えです。ただ、民主党は、この前の総裁選で総裁の顔を替えていたら、もしかしてこんなにみじめな敗北は喫しなかったかもしれない、そんな風にも思えるのだが、どうですか。

俄然坊居士:野田さんは、民主党内ではもっとも保守的な政治家だし、政治姿勢が自民党と変わらないといった印象が強かった。鳩山さんが、自民党野田派などと揶揄していたが、たしかにそんなところがある。だから、三年前の民主党に比べて、党のイメージをかなり違ったものにしてきた感は否めない。三年前に国民が民主党に求めたものが、自民党とは違う政治であったと考えれば、野田さんではその期待に応えられないということになる。そう考えれば、先生がおっしゃることにも一理あるかもしれませんな。

静女史:野田さんと言えば、インターネットの広告に登場していたのが目についたわよね。あの顔で、自分の実績を誇示していたんだけど、あれはかえって逆効果だったんじゃないかしら。あれでは、視聴者は魅力を感じないわ、かえって反発を覚えるひとが多かったんじゃないかしら。

無覚先生:なかなか手厳しいですね。

静女史:わたしは、どちらかというと、民主党を応援してきた方だけど、野田さんは好きになれなかったわ。包容力に欠けているという感じをもったのは、わたしだけじゃないと思う。その包容力のない、ある種の傲慢さが、党の分裂を招いたり、外交をこじらせる原因になったんじゃないかと、思うの。

無覚先生:ほう、外交をこじらせたとは、たとえばどんなことですか。

静女史:たとえば尖閣問題。野田さんは、国際会議の途中、胡錦濤と立ち話をして、その直後に国有化の決定をしたけれど、それが中国側には、一方的で、メンツをつぶす行為と映ったわけでしょ。中国側の言い分を丸呑みすることはないと思うけれど、もう少し別のやり方もあったと思う。少なくとも、相手の感情を逆なでするようなことをすればどんなことになるか、冷静に考えるべきだわ。それをそうしないのは、傲慢な証拠だと思う。韓国との関係についても、同じことが言えると思うの。いわゆる従軍慰安婦問題について、野田さんは李明博の申し入れに対して、前向きに対処すると言っておいて、結局は何もしなかったわけでしょ。そういう態度が、相手を挑発する原因になったことは、いえると思うのよ。

俄然坊居士:そのうえ、民主党は、中国に対して実に曖昧な態度を取り続けてきた。その曖昧さが、中国側の挑発を増長させたと言えるんじゃないですかね。尖閣問題については、もうここまでくれば、日本の領土主権を明確に打ち出し、行動でも示すことが必要じゃないのかな。

静女史:たとえば安倍さんがいっているようなこと?

俄然坊居士:たとえばね。

静女史:でも、そんなことをしたら、戦争になるかもしれないじゃない。

俄然坊居士:それくらいの覚悟がないと、領土主権は守れませんよ。

無覚先生:ところで、話を元に戻すようだが、民主党がここまで徹底的に負けたことについては、選挙制度をはじめとした、日本の政治システムになにか問題があるんじゃないか、という意見もあるが、この点ではどうですか。

俄然坊居士:振り子の振れ方が大きすぎるという意見でしょ? でもそれは小選挙区制度にはつきもののことです。完全小選挙区制をとっているカナダでは、19年前の選挙で、192議席あった与党が2議席になったこともあると、今朝の朝日新聞に載っていましたが、それに比べれば、民主党は今回57議席をとれた。ある意味で、生存を保障されたわけだけれど、それは小選挙区と比例代表制を併用している今の選挙制度に、ある程度の弾力化作用があるためだとも考えられる。

静女史:その弾力化作用とかのおかげで、小さな政党も議席を獲得できるわけよね。でも今回は、小さな政党にはあまり出番はなかったみたいね。

無覚先生:マスコミは一時期、いわゆる第三極について、声高に語っていたね。自民・民主と言う二大政党がどちらも国民の支持を失ったことで、その受け皿となるのはどの政党かといった議論だが、結局第三極は予想したほど伸びず、民主党への批判票の多くは自民党の方へ流れた。その結果、自民党は2005年の郵政選挙に匹敵するような躍進ぶりを果たした。

静女史:でも絶対得票率からすれば、自民党は有権者の四分の一の支持しか得られていないわ。その四分の一で三分の二近い議席を獲得したということには、割り切れないものをかんじるわ。いまの日本には、健全な民主主義と言う点から、何か問題があるんじゃないかって。

俄然坊居士:それは統治システムにかかわることです。二大政党制による権力交代を望ましいかたちととるのか、あるいは多くの政党を共存させ、それらの連立による統治を望ましいと考えるか、どちらを選ぶかです。日本は、細川政権の時に、それまでの中選挙区制をやめて、小選挙区制を導入したわけですが、それはイギリス流の二大政党制が望ましいと判断したからです。二大政党制にも、全く問題がないわけではない。先ほど話したカナダの例などは極端な例だが、議会の構成が民意を反映しなくなることも十分にありえる。だから、試行錯誤を通じて、すこしずつ改良していくしか、方法はないと思いますよ。

無覚先生:今回は新たな第三極をめざした勢力のうち、維新の会が54議席を獲得する一方、卒原発と消費税増税の撤回を訴えた未来の党は惨敗した。改選前は60以上あったものが、一桁に減ったわけだから、ある意味、民主党以上の惨敗ぶりだ。

俄然坊居士:国民の多くは、未来の党は実質的には小沢さんの党だと思っていましたよ。その小沢さんが民主党を抜けたのは、権力闘争に敗れたためで、政策の違いはあまり問題にはならない。民主党も小沢党も、五十歩百歩だという受け止め方が強かったんじゃないか。だから、未来の党は民主党批判票の受け皿たりえなかった。その受け皿は、小沢党ではなく、維新の会やみんなの党が担った。そういうことじゃないかな。小沢さんの時代は終わったといっていいんじゃないか。

静女史:小沢さんの終わりは、日本のリベラル勢力の凋落を象徴してるみたいね。いままでは、自民党の中にさえリベラルな人々はいて、全体を考えれば、リベラルと保守派とが一定のバランスをとってきたわけでしょ。それが、自民党の中からもリベラルな人たちが立ち去り、全体として右がかった人々が圧倒的に多くなった。そうした人たちが一丸になって、日本の方向性を決めていくと思うと、なんだか鳥肌がたってくるようだわ。

無覚先生:静さんの不安が杞憂に終わればいいけどね。今日はこの辺で散会としましょう。




  
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