日本語と日本文化


海の幸 山の幸


天孫降臨後のニニギの次の世代以降の神話は、地上と海原を舞台に展開する。もはや、高天原の世界との垂直軸の話が語られることはなく、水平軸の話が続く。それにともない、神話の南方起源と思われる部分が随所に見られるようになる。

コノハナノサクヤヒメの出産の説話にも、南方との関連を求める説がある。サクヤヒメはニニギに疑われて、子供たちがニニギの子として神性を備えていることを証明するために、産屋に火をつけるのであるが、出産に臨んで火をたく習俗は、広く東南アジアに分布しているというのである。

火照命(ホオリノミコト=山幸彦)、火袁理命(ホデリノミコト=海幸彦)の兄弟が繰り広げる争いの話は、隼人の朝廷への服属を物語るものだとされているが、それは別にして、ここにも海原を舞台にした、南方的と思われる話が展開されている。

海の幸、山の幸と同じような構図を持つものとして、釣り針をなくした男が海中に探しに行き、それを貸した男に復習するという話は、セレベス島やパラオ島にも存在し、海神の娘との結婚譚はニューブリテン島にも存在するという。海を介してつながりあった人々が、同じ構造の話を持つようになったのであろう。

しかし、争いの結果勝利するものが山の幸であるところは、日本神話が基層において北方的であることの反映だと考えられる。

山の幸火袁理命が海中から伴ってきたトヨタマヒメは、ワニの姿となってウガヤフキアエズを出産する。その意味合いについては、先稿で述べたとおりである。

トヨタマヒメは、残してきた子が気がかりになり、ウガヤフキアエズの養育係として、妹のタマヨリヒメを派遣する。タマヨリヒメとは、魂の依る姫という言葉から、巫女を連想させる。古代の日本では、巫女=シャーマンの力が途方もなく大きかったと考えられるから、タマヨリヒメは養育係りとしても、ウガヤフキアエズが長じての保護者役としても、大きな役割を果たしたに違いない。そして、このタマヨリヒメから、人皇の始めたるカムヤマトイワレヒコ=神武天皇が生まれるのである。

ところで、タマヨリヒメはカムヤマトイワレヒコのほかに、イツセ、ミケヌ、イナヒを生む。イナヒは文字通り穀物神としての性格を持たされている。興味深いことは、ミケヌは常世の国に渡り、イナヒは母の国たる海原に入り座したとあるとおり、古事記の記述では、穀物と海との結びつきがことさらに強調されているのである。こんなところから、穀物は海をわたって南の海上から日本にもたらされたとする思考が生まれることともなったのである。

イツセは後に、カムヤマトイワレヒコとともに東征に赴く途上に倒れている。そこから先は人代である。


    


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