日本語と日本文化


日本酒の醸造法


日本酒は、米、麹、酵母、水を原料にして作る。米に含まれる澱粉を土台にして、麹が澱粉を糖に変え、酵母が糖を分解してアルコールに変える。これは日本酒に限らず醸造酒といわれる酒の造り方の基本である。原料が変わっても、工程そのものはほとんど変わりがない。日本人が日本酒を愛してきたのは、米が日本人にとっての主要な澱粉源であったからだ。

日本人は縄文時代から、米を自然発酵させた酒が飲んでいた。今日のように、麹や酵母を組織的に利用する方法ではもとよりなかったが、米に含まれる澱粉を自然に存在する酵母と結合させることによって、酒を作っていたと思われる。

室町時代には「もろみ」を用いた醸造法が発案された。これは米と麹と酵母を組織的に組み合わせる方法で、今日の酒の醸造法のさきがけとなるものであった。現在と同様の醸造技術が確立されたのは徳川時代の初期である。それ以来基本的な工程は変化していない。

日本酒作りは大きく分けて4つの工程からなる。麹つくり、酒母(?)つくり、もろみつくり、もろみからの原酒の圧搾である。

まず麹つくりは、精米した米を蒸して、それにコウジカビを植えつけることによって行なう。通常使われるコウジカビは黄麹とよばれるものだ。これに対して焼酎には黒麹が使われる。米にまかれたコウジカビは10時間ほどで芽を出し、増殖し始める。まる二日たつと最高潮に達し、温度も40度を超えるようになる。この時点で米麹の出来上がりとなる。

酒母は?(もと)とも呼ばれ、その名の示すように酒の母体となるものだ。蒸米に米麹を混ぜ、それに水と酵母を加えて作る。麹が米の澱粉を糖化させ、酵母がアルコールの発酵を促進する。こうして日本酒のもととなるものが醸成されていくのであるが、一度限りの酒母からは濃純な酒はできあがらない。そこで酒母に蒸米と米麹を追加することで酒中のアルコール濃度を上げていく作業が必要となる。それがもろみつくりといわれる工程だ。

もろみとは酒母に蒸米、米麹、水を追加したものだ。追加する回数によって、二段仕込み、三段仕込みなどと呼ばれる。通常一回目の仕込には酒母の倍の量の蒸米、米麹、水が加えられ、三日目に行われる2回目の仕込では4倍、四日目に行われる3回目の仕込では7−8倍の量が加えられる。発酵は二十日ほどでピークに達し、アルコール濃度は18度ほどになる。

発酵の終ったもろみは、圧搾機にかけられて搾られ、酒と酒糟とに分離する。日本酒のもろみには大量の蒸米が入っているので、酒糟の量も膨大だ。

こうして出来上がった新酒は一週間ほどかけておりを沈殿させる。むかしはおりが完全に取り除かれないでどぶろくとなったのだが、秀吉の時代におりのない清酒が作られるようになった。

新酒には発酵の結果炭酸ガスが含まれ、独特の風味がある。最近ではその風味を生かした酒が出回るようにもなった。だが通常新酒は火入れをして殺菌をほどこす。60度30分の低温殺菌方式だ。日本では、パストゥールの発見にはるかに先駆けて、徳川時代の初めには低温殺菌技術が普及していたのである。

生酒とは、火入れをしない酒のことをいう。限外濾過といわれる、精密な濾過を行なった酒である。

以上が日本酒つくりのおおまかなストーリーである。トータルで要する期間は約100日である。

出来上がった酒の味を左右する要素は多いが、決め手は米の品質と酵素の働きだ。今日、日本酒作りには山田錦という大粒の品種が用いられている。これを精米する過程で、表層の部分を捨てて芯に近い部分だけを用いたものが高級な酒とされる。米の表層部分にはたんぱく質や脂肪分が含まれ、酒の味を損なうとされている。

また酵素は純粋なアルコールを得るうえで非常に重要とされる。自然界に存在する不純な酵素が混じったりすると、酸化して味を損なう原因となるので、混じりけのない高い品質の酵素が求められる。

(参考)秋山裕一「日本酒」岩波新書


    


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