日本語と日本文化


三粋人経世問答:NHK番組「永田町・権力の興亡」を語る


無覚先生:先日NHKが三日間かけて「永田町・権力の興亡」という番組を流していたが、あれは非常に面白かった。16年前細川政権が誕生してから、政治家たちの間でさまざまな権力闘争があったことを紹介し、民主党がついに政権をとるに到った経緯を、実に生々しく描いていた。この国の政治の裏面を改めて見せ付けられたようで、わたしなんぞは大変参考になった。二人ともこの番組をご覧になりましたか。

俄然坊居士:ああ、三回とも見ましたよ。

静女史:わたしもですわ

俄然坊居士:しかしあの番組は、たしかに面白かったことは面白かったが、ちょっと視点が偏っているような感じを受けましたな。全編小沢さんの動きに焦点を当てて、しかも小沢さんの立場から、歴史の流れを見ているようなところがある。まるで今日の民主党があるのも小沢さんの賜物だし、その結果日本に始めて本格的な二大政党政治が到来したのも小沢さんのおかげ、こんな調子で小沢さんを持ち上げすぎている。それに比較して自民党の政治家たちは、どいつもこいつも権力亡者で、脚の引っ張り合いばかりやっていたもんだから、小沢さんに懲らしめられたのは当然だと、いわんばかりだ。いったい小沢さんがそんなに偉いのかねといいたい。

静女史:わたしは、個人的には小沢さんが好きなわけではないけど、この番組を見て、小沢さんの果たしてきた役割が多少はわかったような気がするわ。その点、ちょっぴり小沢さんを見直したといったところなの。

俄然坊居士:小生の考えは違いますな。今日の、このような政治状況が生まれたのは、民主党の、ましてや小沢さんの力量によるというより、自民党の自壊作用の結果です。自民党は長い間政権政党であることに胡坐をかき続け、民意とかけ離れてきたことは否定出来ない、それが国民の反発を招き、政権党の座から引き摺り下ろされた、これが掛け値のない事情です。民主党はいわば敵失で得点をあげたようなものです。別に民主党が国民の信頼を得たなどとはいえない、まして小沢さんが立派だなどという評価にはつながらない、小生はそう思うんですよ。

静女史:それでも現実問題として、自民党にかわって政権を担う政党が出現したわけだし、その結果国民の側に政治選択の幅が広がったのは事実だと思うのよ。小沢さんはともかく、民主党を過小評価するのは、どうかと思うわ。

無覚先生:静さんのいうとおり、日本に本格的な二大政党の状況が生じたとはいえるだろうね。これはやはり、健全な民主主義にとって、非常に大事なことだと思う。たしかに今の民主党が、政権政党というには、まだまだ幼い側面を持っていることは否めないだろうけれど、それは今後の民主党の努力にゆだねるしかない。ただ国民としては、折角生まれた、この好ましい政治システムを今後守り育てていくことが肝要なのだろうね。

俄然坊居士:先生のおっしゃる意味がわからないでもありませんが、それが何故小沢崇拝と結びつくのか、というのもあの番組は小沢崇拝といっても過言ではない、それほど小沢さんを持ち上げていた。

静女史:的外れかもしれないけど、あの番組を見た限りでは、小沢さんの情熱というか、信念の強さが、小選挙区制の導入や二代政党制の実現をもたらした、そんな風に受け取れたんです。

無覚先生:小選挙区制の導入に当たっては、自民党も手を貸したわけだから、小沢さん一人の功績とはいえないが、それにしても、小沢さんが仕掛けたことによって実現したわけだから、小沢さんにはやはり、それなりの功績を認めるべきだろうね。

俄然坊居士:まあ小沢さんを持ち上げるのは皆さんの勝手ですが、NHKという報道の公器が、それを行うのは良くない。もっと中立的な立場から報道すべきですよ。

無覚先生:俄然坊君がむっとしてるのもわからないではないが、わたしは必ずしもそんな印象は持たなかった。NHKは別に自分の口から小沢さんをほめていたわけではなく、歴史の節目節目で起きたことについて、小沢さん自身に語らせていただけだと思う。実際、自民党の政治家たち、たとえば野中さんや森さんにも語らせていたからね。小沢さんに甘くて、自民党に辛いと写るのは、過去の政治を担ってきたのが自民党であり、政治的な澱みを生み出したのも自民党であるという、ごく当たり前のことを、重く見ないからだと思うよ。

俄然坊居士:まあ、野中さんにはずいぶんしゃべらせていたが、その内容があまりにも軽いことばかりだ。自民党は権力病にとりつかれた亡者の集まりだということを、当事者に認めさせるために、誘導尋問したとしか思われないようなところがある。野中さん以外の政治家にいたっては、まるでチンピラの寄り集まりみたいに描いていた。

静女史:わたしがオヤと思ったのは、小泉さんの取り上げ方だったの。戦後政治の長い歴史については、わたしは詳しいわけではないけど、今日のような状況が現れたことについては、小泉さんにも大いに責任があると思うの。小泉さんは、在職中は大人気スターで、今でも悪く言う人はそんなに多くないほどだけど、実は自民党が没落する原因は小泉さんが作った、そんな見方をする人がたくさん現れているし、そんな話を聞くと、わたしも、そうかなあと思ったりするのよ。

無覚先生:番組は当事者自らに語らせるという姿勢をとっていたからね、それに対して小泉さんのほうは、自分から語ろうとしないようだから、そんな結果になったんだろうね。

俄然坊居士:そのかわり、あの加藤さんに登場させて、小泉政治の馬鹿さ加減をしゃべらせていましたよ。

無覚先生:まあたしかに小泉さんが、ここ10年ばかりの間、日本の政治に果たしてきた役割は非常に大きかったから、もうすこし小泉さんの本当の気持ちを話してもらいたかったね。そうすれば番組は、もっと幅の広いものになったと思う。

静女史:小泉さんは、自民党をぶっ壊すと、ことあるごとに叫んでいたでしょ。まさか本当に自民党を壊したかったわけじゃないと思うけど、現実にそのとおりのことが起きてしまった。ご本人はどんな風に感じてらっしゃるのでしょうね。

俄然坊居士:せいせいしたと思ってるんではないかな。少なくとも彼が敵対していた自民党の勢力は、利権配分型の政治に埋没した守旧勢力ばかりだ。そんな政党なら、壊してしまったほうがよい。そのうえでもう一度、保守政治の原点に立ち返って、まともな自民党を作り直すほうがよい、そう考えてるんじゃないかな。

静女史:それはちょっと、かいかぶりかもね。それにしても今の自民党の人たちは、権力を奪われたことに茫然自失して、なにをどうしたらよいか、判らないでいるような状態に見えるわ。そんなに早く立ち直れるかどうか、怪しいものだわ。

無覚先生:まあ、小泉さんがどう思っているかは別にして、自民党には健全な野党として、民主党と政権交代を争うようになってもらいたいね。また民主党には、政権担当能力を磨き上げて、国民に希望がもてるような政治をして欲しいものだね。


    

  
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