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野田政権の足元を見るロシア


12月中に予定されていた野田首相のロシア訪問が延期されることとなった。ロシア側からの要求によるもので、表向きはプーチンの健康状態の都合ということになっているが、実際には、政権運営を巡って野田内閣の迷走が続き、直近の解散も視野に入ってきたことを踏まえ、ロシア側が様子見に入ったのだろうと推測されている。立場がふらついている人間を相手にはできないと考えるのは、ある意味当然のことだ。

だがそれだけのことではあるまいというのが、筆者の推測だ。日本はいま、尖閣問題を巡って中国と深刻な対立に陥っており、領土問題については非常に敏感になっている。そんな状況のもとでは、北方領土の問題を巡っても、「静かで理性的な」交渉ができないのではないかと危ぶんでいるのかもしれない。

尖閣問題を巡って日中間が対立する事態は、ロシアにとっては、大きい目で見れば好ましい事態だ。ロシアとしては、この問題を巡って日中が対立すれば、その間に入って第三者的な顔をしていられる。実際最近のロシアは、尖閣については極力中立的な姿勢を示している。つい最近まで、中国に肩入れしてきたことを考えれば、大きな変化だ。

中ソ対立以前のロシアは、基本的には中国と共同して日本に対立するという構図を描いてきた。中ソ対立が表面化した以降も、対日政策の基本としては、この考え方が受け継がれてきたと考えてよい。

それ故、近年日中両国が尖閣問題を棚上げして協力関係を深めてきたことは、ロシアにとって面白くない事態だったに違いない。ロシアにとっての悪夢は、中国が日本と共同してロシアに対抗し、その中で、過去の不平等条約によってロシアにかすめ取られた領土を要求するようになることだ。

しかし、ちょっとしたはずみで日中間の信頼関係が崩壊し、日中は深刻な対立に陥った。日中間の対立が激化すればするほど、ロシアの立場は強化される。日本はロシアと組んで中国を牽制しようとする素振りさえ感じさせるし、中国は中国で、ロシアを第二次世界大戦を共に戦った戦友として持ち上げる程である。つまりロシアは、図らずも漁夫の利を得る立場になれているわけだ。

日本も中国もロシアによって領土を侵略されたという点では共通している。だから、互いに協力して領土の返還をロシアに迫る共通の動機を持っている。ロシアの方も、そうした事態をもっとも恐れているはずだ。

ところが、である。日本も中国も尖閣諸島問題を巡って頭に血が上り、大局を見据えられない状態に陥っている。そんな日本の動向を、プーチンのロシアは冷静にとらえ、少しでも自国に有利に外交を進めようとしているのだろう。




  
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