日本語と日本文化


日本は安倍化するか?


日本の安倍化などというと奇異に聞こえるが、逆に言うと、こんな言葉が飛び出してくるほど、今日の日本の政治状況が異様だということなのだろう。

安倍化とは、英誌エコノミストの最新号に乗った記事で使われている言葉を筆者が勝手に訳したものだ。記事の題名は Aberration、文字通り安倍化だ。安倍氏が自民党の総裁として復帰した経緯と、それが今後の日本の政治にどんなインパクトをもたらすかについて、展望している。

安倍氏の再登場は自民党の当事者でさえ予測していなかったところがある。地方の党員票が安倍氏には冷淡だったことがそのことを物語っている。安倍氏は自民党内の権力闘争をうまく泳いで、国会議員票を動員することができたから勝てた、つまりある種のフロックだったという見方が強い。

そんな安倍氏が復帰できたのは、今の日本に漂っている右傾化の傾向に乗ったためだ、と記事は分析している。安倍氏は自民党総裁選を戦った五人組の中では、最も右翼的な人物である。その安倍氏が勝ったのは、それだけ今の日本では、右翼的言動が受け入られやすくなっていることを物語っている、というわけだ。しかし、そのことは日本にとってあまり好ましいことではない、と記事は批判的な云い方をしている。

記事は安倍氏のリーダーとしての資質を二つの点で疑問視している。一つは政治家としての腕力、もう一つは極右的な言動だ。

総理大臣としての安倍氏は殆どいいところがなかったあげくに、たった1年で自分から政権を放り出してしまった。理由は病気だったというが、その病気とはストレス性の下痢というものだった。ストレスに陥ること自体安倍氏の政治家としての資質を疑わせるが、それを理由に政権を投げ出すなど理解しがたい。いくら強烈な排泄衝動に駆られて、国会に出席するのが億劫だったとしても、政権を投げ出したことに対する弁明にはなるまい、と言うわけだ。

安倍氏の極右的な言動は近年次第に極端になりつつある。もともとそうした見解の持ち主ではあったのだが、総理大臣になった時には、さすがに近隣外交を考慮して、右翼的な言動を慎んでいた。ところが最近では、首相になった後でも、自分は右翼的な言動をやめないと言っている。

その言動とは、尖閣など領土問題をめぐる強硬姿勢、戦前の日本の軍事路線を反省した村山談話や、いわゆる従軍慰安婦問題について反省した河野談話などを撤回して、日本の戦争責任を否定しようとすることなどだ。仮にこうした主張を本気で実行しようとしたら、日本を取り巻く状況が一挙に混沌に陥ることは火を見るより明らかである。

安倍氏が率いる自民党は、次回の総選挙で民主党に勝つ可能性が強い。そうなれば安倍氏が首相に選ばれることは確実だ。こうした政治状況を前にして、外国のメディアが本気になって心配するのも無理はない。

もっとも自民党は単独で過半数を取るまでには至らない可能性が強い。その場合には連立の枠組みを考える必要に迫られるが、いまのところ最も可能性が高いのは、国会に相当の足場を築くだろうと見られる「維新」との連立だ。維新の指導者らは安倍氏に好意を抱いていると報道されているし、維新も安倍氏に劣らず右翼的な体質を持っている。同類相求めるではないが、安倍氏率いる自民党と維新とが結びつく可能性は非常に高いわけだ。

そうなれば日本には、これまで例のなかった右翼政権が誕生することになる。




  
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