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一斉に右を向く五人組:自民党総裁選


自民党総裁選がたけなわだ。町村、石破、石原、安倍、林の五氏が立候補してしのぎを削っている。なにしろ野田民主党の不人気のおかげで、次の総選挙では自民党のタナボタ勝利が期待でき、場合によっては自民党総裁即総理大臣になれる可能性もでてきたとあって、各候補者の意気込みは並大抵ではない。

そこで日本国民として気になるのは、彼等がどのような政策を掲げているかということだ。ところがこれがどうもパッとしない。みなさん外交ではタカ派イメージを、内政では原発推進を押し出すといった具合に、一様に右派路線を押し出している。いわば5人一斉に右を向いていると言った具合だ。これでは候補者間の選択の余地も何もあったものではない。誰がなっても同じことだ。

外交に関しては、今燃え上がっている尖閣問題を前にして、皆さんそろって対中強硬路線を主張している。石破氏は中国批判に声を強め、安倍氏は尖閣の日本領海からの中国船の徹底排除を主張し、町村氏は自衛隊の強化を叫び、林氏は右手で握手し左手で拳骨を握るという。石原氏の言い分はいまひとつ明らかではないが、尖閣問題を引き起こしたそもそもの張本人はご自身の父親ときている。

五氏とも集団的自衛権の行使について前向きだ。ということはアメリカと一緒になって中国と戦争しようというわけなのだろうか。しかしそのアメリカは、日中が話し合いで事態の鎮静化を図ってほしいと言っており、ことこの問題に関しては武力による解決を支持していない。

内政の目玉である原発政策について言えば、五人そろって推進派だ。経済団体への配慮のほかに、将来にわたって原子力の技術を保持することで、いつでも核開発に着手できるよう備えておきたいというのが本音だろうと思われる。

消費税の増税は、自民党が長い間やりたいと思ってできなかったことを、谷垣さんが野田さんと組んでやってくれた。せっかくできたことなのだから、これを是非無事に実行したい。その結果財政に余裕が生まれた分は、そっくり公共事業のために使いたい。自民党の支持者へのプレゼントだ。社会保障へのばらまきなどもってのほかだ。

こういう具合で、五氏の政策は内政では格差容認、外交では力による安全保障だ。だれもが右派路線を堅持しているといってよい。

自民党といえば、かつては党内に多彩な考え方の人々が同居する開かれた政党としてのイメージがあった。しかし今の自民党は、すっかり右傾化して、リベラルな考え方の持ち主は生きていけぬようになってしまったようだ。

谷垣さんには色々な面で問題があったが、どちらかといえばリベラルな考え方をお持ちの方だった。その谷垣さんが総裁選から引きずりおろされた後、自民党内では、リベラルな考え方の政治家は死に絶えたかに見える。




  
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