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アベノミクスの目指すものは何か?


英誌エコノミストの最新号が、カバーストーリーにアベノミクスを取り上げている(Abe's master plan :Shinzo Abe has a vision of a prosperous and patriotic Japan. The economics looks better than the nationalism)。この記事は、アベノミクスの三本の矢のうち、一本目の金融政策が効を奏して日本経済が俄に活性化したことを評価する一方で、二本目の矢である財政出動には限界があること、また三本目の矢である成長戦略としての構造改革には農業や医療分野からの根強い抵抗が予想されるなど前途には厳しいものがあるともいっているが、全体としてはうまいスタートを切ったと評価している。

そういった上で、安倍首相による日本政治のかじ取りが、アベノミクスに見られるような経済運営に特化するものであれば、世界全体にとって好ましいことだが、どうも安倍首相の本意はそれにとどまらないのではないかとも、この記事は言っている。安倍首相がアベノミクスに邁進しているのは、ただ単に失われた20年を取り戻し、経済成長を回復させるだけではなく、それを梃にして強い日本を取り戻したという意図を持っているのではないか、というのである。つまりアベノミクスとは単なる経済成長戦略に留まらず、平成版の富国強兵政策ではないか、と懸念しているわけである。

その記事がそう懸念する理由は、安倍首相のナショナリズムにある。安倍首相は最近の中国の強硬な姿勢に直面して、日本の安全保障を確かなものにするには、ただ単にアメリカの庇護を仰ぐだけではだめで、自分で中国の脅威に対抗できるだけの軍事的パワーを持たなければならない。そのためには何よりも国力を強くせねばならない。国力を強化するためにもっとも重要なことは経済力を高めることだ。国を富まして強い兵隊を作る。それが日本の独立にとって最大の課題だ。安倍首相はどうもそう考えているのではないか、とこの記事は忖度しているようなのだ。

つまり、安倍首相率いる日本が、独自の富国強兵路線をまい進することで、世界にとっての不安定要素になっていくのではないか、そう心配しているわけである。

エコノミストといえば、保守的な論調で定評のあるメディアだ。日本に対しては、西側の同盟国として、経済的にも政治的にも、アメリカやEU諸国と協調している姿勢を日頃高く評価している。そのエコノミストが、安倍政権の将来について深い懸念を示しているのは、やはり安倍首相自身にそう受けとらせるようなところがあるからだろう。

いわゆる歴史認識や従軍慰安婦問題を巡って、安倍首相は歴史修正主義者ではないかとの見方が欧米のメディアに強まりつつある。これは、好意的な見方ではなく批判的な見方であり、場合によっては非難のニュアンスを帯びた見方である。

これに加えて、安倍政権がめざしている憲法改正の方向性も疑念を呼んでいる。9条は別にして、立憲主義や基本的人権の尊重といった先進諸国共通の普遍的理念とされるものに、安倍政権は挑戦しようとしているのではないか。そのような疑念も起きている




  
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