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狂言の諸流派と狂言台本


現在狂言界で活躍している家は、大きく分けて大蔵流の山本派、茂山派、和泉流の三宅派、名古屋派である。二流四派ともいわれる。

徳川時代まで、この二流に加えて鷺流があり、家元を中心にして多くの狂言師たちがいたが、明治維新の混乱のなかで滅びた者が多く、今日に伝わるのは以上の家のほかほんの小数になってしまった。

山本派は、豊後岡藩の江戸詰め狂言師であった山本東次郎が、明治になって大蔵流家元が中絶した後、東京の大蔵流狂言として孤塁を守ってきた。当主は代々山本東次郎を名乗っている。

茂山派は京都を根拠にして活躍してきた。本家筋の千五郎家と、分家筋の忠三郎家からなる。善竹家は忠三郎家から分かれたものである。

三宅派は、加賀藩に召抱えられながら京都で活躍していた三宅藤九郎の流れである。近代に至って野村万蔵家が中心となり、万蔵、万作、万斎などの名手を輩出している。先に家元談義で和泉流を混乱させた和泉元弥は、和泉流本家の直系ではなく、三宅派が途中から名義を継承したのだといわれる。

和泉流は本家の山脇家が尾張藩に召抱えられていたこともあり、名古屋を拠点とする狂言師が多かった。現在名古屋派を代表するのは野村又三郎家である。

狂言の現行曲数は、大蔵流で200番、和泉流で254番、このうち重なり合うものを差し引くと、実数は263番である。

狂言の台本は、家によって用いるものが異なる。このうち、山本派が用いる「山本東本」は「岩波古典文学大系」のなかに二冊本として収められている。また、茂山千五郎家の台本も、小学館の「日本古典文学全集」に収められている。

徳川時代に絵入りで刊行された「狂言記」というものがあるが、これは能の台本というよりは、一般読者向けの読み物として作られたようである。


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