日本語と日本文化


能「小鍛冶」を見る


先日NHKが放送した能番組で宝生流の「小鍛冶」を見た。シテは朝倉俊樹、ワキは福王和幸が演じていた。この能についてのレビューは別稿で書いたところなので、今回は詳しい紹介はやめて、この舞台を見た印象を書いてみたいと思う。

小鍛冶といえば、能の中でも最も祝祭的な雰囲気の強いもので、したがって役者が舞台狭しと動き回り、目を離す隙を与えないというイメージが強いが、この宝生流の舞台は、比較的落ち着いた雰囲気が感じられた。やはり宝生流と言うのは、観世流や喜多流に比較して、落ち着いたところが売り物で、そんなところが出ているからかもしれない。

小鍛冶は人気曲とあって、様々な小書がある。観世流では、赤頭を基本とし、白頭や黒頭のバリエーションがあるが、宝生流のこの舞台では、前段で黒頭の童子が出てきて、後段で白頭の飛手面が出てきた。

小鍛冶はめでたい能ということになっていて、正月に演奏されるほか、節目の行事で取り上げられることが多い。何故めでたいかというと、一つには日本刀の霊力に由来するとともに、この曲全体が祝祭的な雰囲気をもっていることにもよるのだろう。

なお、小鍛冶とは三条宗近の刀作りに協力した狐のことであるが、当の宗近は日本刀の世界では伝説的な刀匠ということになっている。その工房は三条通の一角にかつて位置し、その跡に今でも小さな碑石が立てられている。(筆者はかつて、観世流の謡曲仲間と共に、この碑石の前で「小鍛冶」の一節を謡ったことがある)






  
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