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女性をあらわす言葉に「め」がつくこと


姫(ひめ)、少女(おとめ)、娘(むすめ)、婦人(たおやめ)、寡婦(やもめ)、産婦(うぶめ)、潜女(かずきめ)、遊女(うかれめ)などの言葉は、いずれも女性を表す言葉だが、そのどれもに「め」という言葉がついている。「め」はこのように接尾辞として用いられるばかりでなく、「めうし」や「めとり」のように接頭辞としても用いられる。要するに女性の符号だ。

この「め」が「目」から来たのであろうと推測したのは南方熊楠である。目を描いた形を縦にすると女陰に似ている。そこから「目」と女陰との間に連想が働いて、「め」が女陰を表す言葉になり(「おめこ」、「めめ」などもその一族)、ひいては女性を表す言葉になった。そう熊楠は類推したわけなのである。

目と女陰との間に類似を認めるのは案外多いらしく、インド起源の大黒天が顔に沢山つけている目玉は女陰の相を表すのだそうだ。大黒天はまた鬼子母神と結びついて子守や安産の神様になることもあるが、それも大黒天と女陰との関連から来ているのであろう。

目とは直接関係ないが、女陰をもって女性を代表させることは漢字においても認められる。「雌」や「妣」や「牝」といった文字は女性を表す字であるが、それらに含まれている「比」という文字は、女性の小陰唇をかたどった象形文字に起源がある。(「牝」には「比」のうちの半分だけが取り入れられている)小陰唇が二枚並んだ形が「比」という文字に発展したわけである。

「め」が女性の符号だとすれば、男性の符号は「こ」である。「ひめ」に対して「ひこ」、「おとめ」にたいして「おとこ」の類である。

「め」と「こ」は「み」と「き」に転化する場合もあった。「いざなき・いざなみ」、「おきな、おみな」のセットの中に含まれる「き」と「み」がその例である。また「こ」が「ぐ」になって、「をぐな・をみな」のような組み合わせになることもあった。

「こ」がなぜ男の称号を現すようになったのか。そこのところは、よくわからない。(もしかしたら、き=木と関係があるかもしれない。突っ立った木の形が勃起した男根の形を連想させた可能性もある)


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