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日米韓は一体として北朝鮮を完全破壊すべきか


ドナルド・トランプが初の国連演説で北朝鮮を激しく攻撃し、完全破壊を辞さないと述べたことで世界を震撼させた。北朝鮮を完全に破壊するとは、どういうことか。2400万の北朝鮮人を皆殺しにすることだろうか。多くの人がそう危惧したと思う。アメリカは1600発以上の核弾道を持っていると言われるから、それらをすべて北朝鮮に打ち込めば、たしかに北朝鮮は人っ子一人生き残らない焦土と化し、完全破壊されると思う。またトランプならそれをやりかねないと思っている人が多いだろう。

トランプがこんな大胆なことを発言した背景には、極東の「ならず者」がアメリカに盾ついていることへのいら立ちがあるとともに、いまなら北朝鮮からの打撃をかわしながら、この気に入らない相手をせん滅するチャンスがあると思っているからではないか。いまのところアメリカに北朝鮮への攻撃を思いとどまらせているのは、北朝鮮の反撃能力への懸念であり、その反撃がアメリカや同盟国、特に韓国や日本に重大な打撃を与える可能性があると考えているからだ。しかし、アメリカとして北朝鮮の対米反撃能力をなんとかかわす見込みがあり、韓国や日本が北朝鮮への攻撃に同意すれば、トランプはそれ(対北朝鮮軍事攻撃)を実行する可能性が高い、そう今回の国連演説は思わせたのではないか。

北朝鮮を完全に破壊することで、どのような事態が生じるのか、様々なシミュレーションがなされているが、ここではそれには触れない。ただ、北朝鮮がだまってやられるだけに甘んじておらず、一定の反撃を行い、それがかなりのハザードをもたらすことは指摘しておきたい。

トランプ政権は、同盟国つまり韓国や日本に影響の及ばない方法で、北朝鮮を攻撃できると最近になって言いだした。これはおそらく、北朝鮮攻撃に及び腰な韓国政府を安心させ、ひいては同意をさせるための方便のような感じがする。いまどき、北朝鮮からの反撃を一切許さずに、北朝鮮を完全に破壊することなど到底不可能だ。

韓国が及び腰なのと対照的に、日本の安倍政権はトランプに迎合的だ。先日ニューヨークに寄稿した小文の中で安倍総理は、軍事オプションも含めあらゆる選択肢があるとするアメリカの方針に強い賛意を表したほどだ。なぜそんなことが言えるのか。もしかしたら安倍政権は、北朝鮮による反撃を甘く見積もっているのかもしれない。いまの北朝鮮が持っている有効な核弾道は、せいぜい十数発程度と言われる。仮に米朝戦争が勃発し、北朝鮮が反撃を開始する場合、それら核弾道のほとんどは対米、対韓国に使われ、日本向けにはせいぜい二三発にとどまるだろう。それくらいならなんとかして防げるかもしれない。ソウルと違って日本は、北朝鮮の通常兵器を恐れる理由はそんなにない。だからこのさい、目の上のたんこぶである北朝鮮を一気に完全に破壊するのも悪い選択肢ではない。そう考えているのかもしれない。北朝鮮を地上から消してしまえば、日本は枕を高くして眠れるようになる。安倍政権がそう思っても不思議ではない。

一方韓国の文政権は、複雑な反応をしている。金正恩のやり方には腹が立つが、かといって、一気につぶせるとは考えていない。下手に相手を刺激して、重大な影響をこうむるのは自分だとわかっているからだろう。北朝鮮の対韓国攻撃戦略には、核弾道のほかにさまざまなオプションが含まれている。通常兵器のほかに、毒ガス攻撃など、その破壊力は韓国に数十万、あるいは数百万単位の死者をもたらす能力をもっている。まともな頭の持ち主なら、こうした事態を前にして、トランプのように能天気にはなれないものだ。

トランプとしては、日米韓が一体となって北朝鮮に立ち向かうというのが理想だろう。できたら韓国と日本から北朝鮮攻撃への同意をもらいたい。そうしたうえで一気に北朝鮮を攻撃し、完全に破壊したい。完全に破壊するとは、2400万の北朝鮮人を一人残らず殺すということだ、そうトランプは思っていることと思う。その思いに日本と韓国はどう向き合うか。


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