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方丈記を読む:現代語訳と解説 |
方丈記は鎌倉時代初期に成立した随筆集で、著者は鴨長明。鴨長明は、京都下鴨神社の禰宜の家系に生まれたが、神職につくことはなく、もっぱら歌の師匠として名をなした。方丈記は鴨長明晩年の随筆集で、枕草子以来の本格的随筆集として、後年の徒然草を加えて三大随筆集と呼ばれている。 鴨長明は、晩年京都郊外日野に一丈四方の草案を結び、そこで閑居しながら世の中の動きを随筆というかたちで記した。折から平安時代から鎌倉時代への転換期における激動の時代であり、戦のほかに天変地異も重なって、世の中は混乱の極みにあった。鴨長明は、仏教的な世界観からそうした世の中の動きを眺めた。したがって、その見方は平家物語に通じるような無常感に満ちている。 方丈記に記された時代の出来事としては、安元の大火(1177年)、治承の竜巻(1180年)、福原遷都(1180年)、養和の飢饉(1181-82年)、元暦の地震(1185年)などがある。この時代に起きた源平合戦の様子については、詳しく言及されていない。おそらく京都が戦場になることがほとんどなかっためであろう。 最終的な成立時期は、建暦二年(1212年)。その四年後に鴨長明は死んでいるから、かれにとっては絶筆というべき著作である。ここではそんな鴨長明の方丈記について、全文を現代語訳しながら、簡単な解説を加えてみた。 方丈記(一):ゆく河の流れは絶えずして 方丈記(二):去安元三年四月廿八日かとよ 方丈記(三):又治承四年卯月の頃 方丈記(四):治承四年水無月の頃、にはかに都遷り侍りき 方丈記(五):二年が間、世中飢渇して 方丈記(六):いとあはれなる事も侍りき 方丈記(七):大地震振ること侍りき 方丈記(八):すべて世中のありにくゝ 方丈記(九):すべてあられぬ世を念じ過ぐしつゝ 方丈記(十):六十の露消えがたに及びて 方丈記(十一):その所のさまをいはゞ 方丈記(十二):ふもとに一つの柴の庵あり 方丈記(十三):假の庵もやゝふるさととなりて 方丈記(十四):たゞわが身一つにとりて 方丈記(十五):三界は只心一つなり 方丈記(十六):一期の月かげ傾きて |
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