日本語と日本文化


三粋人経世問答:鳩山内閣発足を語る


鳩山内閣が発足した。民主党を枢軸にして、社会民主党、国民新党との連立政権だ。戦後の日本政治にとって本格的な政権交代といえるものだ。歴史的な事態を前に、国民の関心と期待は並々ならぬものがある。そこで前回の政治問答に引き続き、三粋人の語り合うところを聞いた。

無覚先生:いよいよ鳩山内閣が発足したね。戦後日本の政治の歴史の中で、これまで野党が政権を握ったことはあったが、いづれも基盤が不安定ですぐにつぶれてしまった。今回はどうも違うことになりそうな気がするね。この前の話の中でも出ていたけれど、国民は自民党による長い政権運営に愛想をつかし、それとは異なった、自分たちのための政治を行ってもらいたいという気持ちで、新しい政権を選択したといえる。だから腰をすえて、新政権のやり方を伺っているんじゃないかな。鳩山内閣はそれにどこまで答えられるか。いよいよ日本にとって新しい政治の実験が始まるような気がする。

静女史:わたしは期待してますのよ。とにかくこれまでの自民党政治そのままでは、日本の国はとんでもないことになりそうな気がするんですもの。

俄然坊居士:まあお二人のおっしゃることは、それなりの理屈があると思いますよ。自民党はだらしがなさ過ぎましたからな。阿部さん以降の三人の首相は、わたしの目で見ても、情けないほどの体たらく振りでした。だが民主党さんは果たして、この国の政治を望ましい方向に導いてくれるのか、どうも心もとない気もする。ともあれ当面は、お手並み拝見といきましょう。

無覚先生:鳩山政権は発足するやすぐに、マニフェストを意識した政策を打ち出したね。どれも国民生活にとって切実な問題ばかりだ。なかでも、子供手当や高校授業料無料化などは、すぐに影響が現れる政策だ。一方、八ツ場ダムの建設中止をはじめ、公共事業に大胆なメスを入れようとしている。

静女史:子供手当などはすぐにも実現して欲しい。いまの日本の世の中は、働きながら子供を育てようとしている人たちにとって、本当に住みづらいんですもの。フランスなんかは、少子化を食い止めるために、国を挙げて取り組んでいると聞いていますわ。子供手当てもそうですし、保育施設も充実を図ったそうよ。そのおかげで女性の出生率が上がったというじゃありませんか。日本ももっと大胆に、少子化対策に取り組むべきです。

俄然坊居士:だからといって、金持にまで子供手当てを給付することはないと思いますね。それこそバラまきだ。せめて所得制限を設ければよいと思うのだが、民主党さんは何を考えているんですかね。八つ場ダムの建設中止もそうです。50年以上の歳月をかけて、膨大な資金を投じ、もはや最終段階に入っているというじゃありませんか。それをなぜいまさら中止する必要があるのか、東京都の石原知事をはじめ流域の自治体の首長までこぞって反対していると聞きますが、小生もそう思います。

静女史:ダムも必要かもしれないけれど、国民の身近な生活課題のほうが大切だと思うわ。いまはお金に余裕のない時期なんでしょ、本当に必要なところにお金を使うべきだと思うわ。

無覚先生:閣僚の名簿をみると、民主党なりの意欲が伺われると思えるね。これまで自民党と対決してきた政策課題ごとに、それに明るい人材を、それぞれの分野に配置している。その中で傑作なのは、国民新党の亀井さんを郵政担当の大臣に据えたことだ。亀井さんはご案内のとおり、郵政民営化に一貫して反対してきた人だ。それがもとで小泉さんと衝突し、自民党を追い出された。亀井さんにとって、いまはその意趣返しをはかるときなんだろうね。いったいどんなことをするつもりなのか、興味深いところだね。

俄然坊居士:いまさら郵政民営化を白紙に戻して、再び官業化しようとするのはアナクロニズムもいいところじゃないんですかね。たしかに郵政のあるべき姿が自民党の思惑通りでよいとは考えませんが、いったん走り出した路線をスタート台に引き戻すのは、余りにも現実離れしていますよ。

静女史:あらそうですの。わたしは郵政のことは余り興味がありませんけれど、いままで自民党がやってきたことを白紙に戻したって、別に差し支えはないと思いますのよ。

無覚先生:民主党の人事には、ほかにも面白いところがあるね。これは連立政権という枠組みからしてありうる話といえるのだが、鈴木宗男氏を衆議院の外交委員長に据えたことなどは、さすがに行き過ぎだと思うね。新聞もこぞって疑念を表明している。

俄然坊居士:鈴木宗男氏といえば、収賄容疑で逮捕され、高裁段階まで懲役刑を課せられている人物です。これまでの日本の議会史上、刑事被告人が常任委員長に就任した例はないし、まして刑が確定すれば間違いなく刑務所送りになる人間がなったためしなどない。国辱ものだと反発する人がいるのも、無理はないですよ。これは小沢一郎の、例の無理押しの結果でしょう。彼は鈴木氏に何か借りでもあるんですかね

無覚先生:それはともかく。民主党が自民党と一番違うところは、脱官僚という点だろう。政策を官僚に頼るのではなく、政治主導で行うといっている。組閣のプロセスや国民へのメッセージのなかでも、それを意識的に打ち出している。

俄然坊居士:政治主導は聞こえはいいが、果たして民主党にどこまでそれをまっとうできる能力があるのか、それを見極めたい気分ですよ。たしかに自民党のように、官僚におんぶでだっこではいかんが、だからといって政策立案から官僚を締め出すことには、一国民として不安がある。民主党は官僚を敵視するのではなく、もっと上手に使いこなすべきです。

無覚先生:ところで民主党の粋のよい出発振りに比べて、敗れた自民党の意気消沈振りが目立っているね。自民党は党の再生をかけて、新しい総裁選びに入ったけれど、今ひとつ盛り上がっていないような気がする。

静女史:谷垣さん、河野さん、西村さんの三人が立候補しましたけれど、失礼ですが、どなたもあまり魅力を感じないわ。

無覚先生:どうしてそう感じるのだね。

静女史:谷垣さんはこれまで何回か総裁選に立候補して、そのたびに負けてきたんでしょ。それにご自分自身派閥の長もやったことがあるんでしょ。わたしの目には古い自民党の生き残りのように見えますわ。自民党はやはり、復活するためには、大胆に若変わりしなけりゃだめよ。かといって、河野さんも西村さんも、そんなに魅力があるように思えない。河野さんはテレビで見ていても、自民党内の若返りばかり訴えている感じで、国民への姿勢が伝わってこないわ。西村さんなんかは、わたしはこれまで名前も知らなかったくらいです。

無覚先生:自民党はいまが臥薪嘗胆の正念場だ。その苦難を乗り越えて復活するためには大胆な工夫が必要になる。谷垣さん以下の総裁候補たちは、国民の意識に訴えかけるほどの迫力を持っているのかね、俄然坊君、どう思うかね。

俄然坊居士:正直言って、小生もがっかりしました。谷垣さんの言っていることは、これまで小泉さんらがいっていたことと全くかわらない。いったい今回の敗北を真剣に反省しているのかといいたい。河野さんのいっていることも、世代交代ということ以外は、谷垣さんと五十歩百歩だ。西村さんにいたっては、何をいっているのかもわからない。情けない限りです。これでは自民党は当分浮かび上がれないでしょう。

静女史:わたしもテレビを見ていて、谷垣さんのおっしゃてることが気になりました。あの人は良質な保守層を自分たちの政権基盤だなんていってましたけれど、良質な保守層っていったい何なんでしょう。良質な保守層がいるということは、悪質な国民もいるということなのでしょうが。それにしても、これまで自民党の政権基盤となっていた層までが自民党を離れたからこそ、自民党は敗れたんでしょ。そうした人たちはこれまでは自民党にとって良質な保守層といえるものだったかしれないけで、自民党のおかげでひどい目にあったんでしょう。その人たちを含め国民全体に目配りするようでなければ、とても国民の支持は得られないと思うの。

俄然坊居士:女史のいうことはわからないでもない、自民党はもっと謙虚になって、国民の声に耳を傾けなければならんでしょうな。

無覚先生:ともあれ、民主党中心の鳩山政権は発足したばかりだ。自民党は自民党で、復権を果たすためには時間がかかるかもしれない。どの党も、党利党略ではなく、国民の幸福のために、政治活動を行ってもらいたいものだ。


    

  
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