日本語と日本文化


反故にされる事業仕訳:官僚のしたたかさ


民主党政権時代に行われた所謂事業仕訳は、法的拘束力を伴わず、また短時間で性急に行われたとの批判もあったが、行政の無駄に切り込むという点では一定の効果があったといえよう。ところが、民主党から自民党への政権交代に伴って、事業仕訳で廃止された事業が続々と復活しているらしい。それも、きちんとした再点検なしに、ずるずるとなし崩し的に。

東京新聞の報道によれば、12年度補正予算や13年度概算要求の中に、こうした事業が続々と復活しているという。たとえば、補正予算の中では、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」事業が一千七億円計上された。これは補助金を配るシステムが不透明だという理由でカットされたのだが、今回は従来の補助金配分システムをそっくりそのまま残した形で、しかも事業規模を膨らませて復活した。

来年度概算要求の中でも、事業仕訳で廃止された事業が、ほぼ従来と同じ形で予算要求されている。その中には、内閣府の「東南アジア青年の船」事業など、昨年の6月に各省庁が独自に行った事業仕訳で廃止と決まった事業も含まれている。

こうした動きに対しては、批判もある。北海道大の宮脇淳教授(行政学)は「仕分けは、各府省庁の仕事の状況を公開し、必要性を国民に考えてもらう仕組みとしては一定の意義があった。政権与党が代わっても行政の無駄をチェックする作業が後退することがあってはならない」と指摘しているそうだ。(東京新聞)

しかし官僚たちにとって、そんな批判はどこ吹く風のようだ。民主党の事業仕訳にはいやいやながらおつきあいしただけで、彼等が去って自民党が復活すれば、自民党時代に基礎が作られた事業を復活させることに何の遠慮があろうか、というわけだ。ちなみに、事業仕訳で廃止された事業の多くには、官僚たち自身の利権が伴っていた。それらを復活すれば、官僚の利権も復活するというわけだろう。

こうした官僚たちのしたたかな処世術をコントロールするためには、政権が代ったからといって、官僚の判断だけで容易に政策が変更されることがないよう、何らかの仕組みが必要だろう。




  
.


検     索
コ ン テ ン ツ
日本神話
日本の昔話
説話・語り物の世界
民衆芸能
浄瑠璃の世界
能楽の世界
古典を読む
日本民俗史
日本語を語る1
日本語を語る2
日本文学覚書
HOME

リ  ン  ク
ブログ本館
万葉集を読む
漢詩と中国文化
陶淵明の世界
英詩と英文学
ブレイク詩集
マザーグースの歌
フランス文学と詩
知の快楽
東京を描く
水彩画
あひるの絵本




HOME日本の政治





作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2008-2013
このサイトは作者のブログ「壺齋閑話」の一部をホームページ向けに編集したものである