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桔木:屋根を安定化させる工夫


日本の伝統的木造建築の基本的な構造は、柱と梁桁からなる軸組の上に小屋組と呼ばれる屋根を乗せることだ。そしてこの屋根が非常に大きいことが特徴だ。建物の美しさや荘厳さは、屋根の大きさに比例して強まるとさえ考えられてきた。

軸組と小屋組の接点には工夫を加えないと、屋根は安定しない。そのために組物が取り入れられたが、それは寺院や神社にとどまった。住居を始めそれ以外の建物には、依然軸組の上に小屋組を被せるという方法がとられ続けた。

桔木(はねぎ)と呼ばれるものは、大きな屋根を軸組の上に安定的に乗せるために工夫されたものだ。

簡単に説明すると、次のようなものだ。桁と垂木の間に中間の木材をいれる、一端は垂木の先端に接し、反対側は屋根の内部空間に突き出している、その中ほどを柱の上部に当たるところに設定し、そこを支点として屋根の内部に向いたほうを上部から押すようにする、すると垂木に接した部分はてこの原理に従って跳ね上がる、この跳ね上がる力を応用して垂木を持ち上げ、庇の先端部が垂れ下がらないようにする。

桔木の導入がもたらした効果の中で最も大きなものは、屋根の加重を分散して支えることが可能になったことだ。というのはそれまでは、垂木を通じてかかる屋根の荷重を、桁の一点で支えていたものが、桔木を導入することで、支点(従来の加重点)のほかに、屋根から桔木への力点と桔木から垂木への跳ね返り点が加わったからだ。

こうすることで、屋根の安定度は飛躍的に高まった。それに加えて、柱の構造も柔軟にすることが可能になった。従来の方法では、屋根の加重をしっかり受け止めるためには柱の配置を規則正しくしなければならなかったのに、桔木を導入することで、ある程度柱が不規則に並んでも、屋根を支えられるようになったからだ。

付随的な影響としては、それまで軸組と小屋組との接合役を務めていた組物の負担が小さくなった。そうなることで組物は構造上の部材としての意味合いを離れて、装飾としての意味合いを強めることができた。

こうして屋根を大事にする日本の建築は、ますます大きな屋根を目指して発展するようになった。


    

  
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